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2006年3月11日 (土)

死と生を感じる

喪服を送ってもらったその日、昔のバイト先の同僚からメールがあった。
「お世話になったオーナーが亡くなった」と。
喪服を使うことはなかった仕事だったが、まさかこういう形で使うことになるとは。
複雑だった。

朝、仕事が終わり、その足で葬儀が行なわれる寺へ向かった。
亡くなられたのは、前に僕がバイトをしていた吉野家の違う店舗のオーナーで、僕はそのオーナーにいろいろとお世話になっていた。

オーナーの店と近いので、よくすれ違う。そこでは必ず長話になる。いつも元気で、いろいろ教えてくれたり、褒めてくれたり、引き抜こうとしてくれたり・・・。とにかく、おせっかいで元気な人だった。


最寄の駅で、昔の同僚の女の子と、旦那さん、娘さんと待ち合わせる。
「もう、一歳半かあ」
出産すると彼女が僕と同時期に辞めたのが、2年前。
月日が経つのは早い。
「今日はおとなしいわ~」
娘さんはここがどういう場所か自分なりに一生懸命理解しようとしているのだろうか。
大きく開いた目は、僕をずっと追っていた。


僕は、今年に入って一度、オーナーを見かけたことがある。
下北沢の公営施設だったか。
「痩せたな」
あんなに、豪快で元気であつかましかった人が、みるからに痩せてしまっていた。
僕は一瞬たじろいでしまい、オーナーが他の人を連れて歩いていることをいいことに、挨拶をするのを止めてしまった。
後悔してももう会うことはできない。


「小さい子がいると救われるわね~」
オーナーの店舗の店員さんが僕らに近づいてきてそう言った。
確かに、爛々としたその瞳が、参列している人たちの目と心を潤しているような気がした。
彼女は、顔を体を動かしながら、一生懸命ここにいるんだぞとアピールしている。
生きていることをアピールしている。


葬儀最後に亡くなられたオーナーの奥様がこう言った。
「彼は生きようと必死に闘病生活を送りました」
「彼を胸に焼き付けていてください」
オーナーとの思い出が走馬灯のように流れ、目頭が熱くなった。


死がそこにあり、生がここにある。


帰り、親子3人と一緒にご飯を食べた。
「僕よりも食べるね~」
娘さんは、スパゲティとポテトとから揚げとスープをお子様ランチを頼んだのだけど、お行儀良く、手づかみでから揚げをとり、もう一方の手でスパゲティをつかみ口に入れ、その手でポテトをつかみ食べていた。その姿が愛らしくて、あほでかわいかった。


帰る電車で、目を瞑って考える。
オーナーも生きるために一生懸命生きていた。
あの子もここで生きようと一生懸命生きている。
死とは生を一生懸命生きた結果のような気がする。
オーナーを見ているとなんだかそう実感した。


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コメント

死とは生を一生懸命生きた結果…
 そうなるようにしなければって思います。

投稿: 夕陽 | 2006年3月11日 (土) 02時05分

俺たちはその生と死を感じ、伝えていこう!
表現者として。

投稿: 工藤興市 | 2006年3月11日 (土) 04時18分

>夕陽さん

そうですね。僕も一日一日をより大切に生きなきゃいけないなと思いました。

投稿: りょーちん | 2006年3月11日 (土) 10時19分

>工藤さん

初コメントありがとうございます。

生きているということは既に表現者であるとは思いますが、僕らはそれを仕事としている身、さらに意識して生きなきゃいけんなと思いました。

熱く。

投稿: りょーちん | 2006年3月11日 (土) 10時23分

そういう大切なことを考えさせてくれるために、彼は旅立っていったのかもしれない。
それをしっかり受け止めたりょーちんは素晴らしい。

投稿: こにぴー | 2006年3月11日 (土) 10時47分

失敗をせずに人生を送ることはできないけど、やらずに後悔していくことは避けていきたいと強く思いました。

こにぴーさん、ありがとう!

投稿: りょーちん | 2006年3月11日 (土) 17時24分

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