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2006年9月30日 (土)

ネオンが異様に瞬くバッティングセンター

先日、とある街のバッティングセンターに行った。





ぶらりと街を歩いていたら、ネオンが異様に光る、昔ながらのバッティングセンターを見つけた。
今まで行ったことがなかったからか興味本意からか、無性にひきつけられてしまい、店に入ることにした。




中に入ると、ガラス越しに球速ごとゲージで分かれている。
75キロの超スローボールから130キロの超スピードボールまで。

「さて、何キロがいいかな」

バッティングセンターは初めてだが、小学生の時は野球をやっていた杵柄がある。それと変なプライドも。
「130キロ?いや、打てないとそれも恥ずかしいからな」

真ん中の中速110キロにすることにした。




ゲージに入り、100円玉を3枚投入する。
起動するのか不安になるような、古ぼけたコイン投入機だった。

入れると、目の前のピッチングマシンに赤いライトが灯り、うごめく音が聞こえ始めた。

「ちょっと待って」
バットも握っておらず、構えてもいない。
慌てて財布をズボンのポケットにしまい、近くにあったバットを掴み、ホームベースの前でバットを構えた。




機械の腕が下から上にあがり、ボールが小さい網目から放たれる。
バットを振る。
当たる。
ボールはグランドで言えば、レフト方向へライナーで飛んでいった。
「うん。感は鈍っていない」

と、僕の安堵をよそに、次々とボールが飛んでくる。
一球一球の間の感覚が掴めず、空振りだったり、ボールが前へ飛ばなかったりを繰り返す。

「う~ん。こんなんじゃない」
コインを入れていきなりだったから、財布や携帯、手首に数珠をしたままバットを振っていた。
「本気を出すかぁ」
機械相手に負けられない思いと、こんなんじゃないという自分に対してのプライドが許されない思いが交差する。
スピードが速いのが理由じゃないのかという正論は置いとき、ボールが投げられてくるほんの短い間に、邪魔者達を地面に投げ捨て、身軽になって再度構えた。

「さあ、来い」




肩の力が抜け、本来(頭のイメージ)の打球が飛び始める。
「よーし、いい感じ。これから・・・・・」

案の定、ピッチングマシンの赤ランプは消え、ギクシャク動いていた機械は錆びた鉄くずのように動かなくなった。

「・・・・・、今日はこのくらいにしといてやろう」





ゲージを出ると、準備運動をしていなかったからか、首が痛い。

「思いっきりネジっていたもんなあ」
首をさする。
「それとも歳か・・・」

手のひらの匂いを嗅ぐ。
「ああ、懐かしい匂い」

遠い記憶を辿りながら、絶対また来ると、瞬きすぎるネオンに言いながら店を後にした。

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コメント

『「・・・・・、今日はこのくらいにしといてやろう」』

よしもと新喜劇を思わせる台詞に ぷ ぷぷぷ

さすが 笑いの真髄を きわめてはるっ

バッティングセンター…

ウチもたまに行きますが(元ソフトボール部)左打ちなので

古いところには あんまないんですよね。左バッターボックス…

一回無理やりやろうとして 危険な目に あいかけました…

投稿: maru | 2006年9月30日 (土) 15時50分

>maruさん

ま、こてんぱんにやられたのですけどね。

次に会ったときには、そうはいかへんで。

投稿: りょーちん | 2006年10月 1日 (日) 00時15分

ちょっと可愛いオチですね


私もバッティングセンターの球の間合いがつかめないんです

投稿: にゃんたん | 2006年10月 1日 (日) 14時09分

映像が浮かび音が聴こえ、匂い迄感じる良い日記ですね。
ありがとうございます。

投稿: 夕陽 | 2006年10月 1日 (日) 17時29分

>にゃんたんさん

負けず嫌いでして・・・。
機械に負けるなんて、僕としては許されないわけで・・・。

つい、ムキになっちゃいました。

準備運動してからやれば、もっと違った結果になっていたのにな。

次は、もう、間合いも掴んだし、ばっちりです。

投稿: りょーちん | 2006年10月 4日 (水) 00時48分

>夕陽さん

こちらこそ、素敵なコメントありがとうございます。

とても古いバッティングセンターでしてね。
それを文字できちんと伝えたいな、と思って書きました。

コインを入れるところなんて、「大丈夫かよ、これ?」って真剣に思いましたもん。

投稿: りょーちん | 2006年10月 4日 (水) 00時49分

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