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2006年12月25日 (月)

ただの事実とただの真実、そして曖昧な記憶

8年前、いや9年前のこの日・・・。
まだ、僕はポケベルしか持っていなかったあの日。



俳優養成所に通っていた僕には、好きな女の子がいた。
片思いの日々は続き、彼女に告白しても快い返事はもらえないでいた。

恋愛をどう育んでいっていいかがわからず、僕の思いは彼女に届いているのか測れず、
友人としての距離はどんどん縮めていたが、
「友人以上恋人未満」
という言葉は僕のためにあるのかと、彼女との関係を恨めしく思った。




そんなあの日・・・。

クリスマスイブにひとりであることに耐えられなかったのか、
彼女に無性に会いたくなったのか、
僕は、どこからか聞きつけた、
彼女が渋谷にあるライブハウスに行くという噂を聞きつけ、
渋谷の駅前に立っていた。
イルミネーションが彩る、夜に。

僕から彼女への通信手段は、彼女のピッチにかける電話のみ。
そこにメッセージを残し、いつ来るかもわからないポケベルを握りしめ待った。




来るとも知れない彼女を雑踏の中、ただ待ち続ける。
公衆電話からかける彼女への電話はいつも留守電で(そりゃそうだ。彼女は大音量のライブハウスの中にいるのだ)、僕はそのメッセージを聞けているのかわからない彼女をただ待ち続けた。

彼女は渋谷から遠い場所に住んでいるから、途中で帰るかもしれないと思い、開演時間から僕は待った。
渋谷のスクランブル交差点から流れてくる人並みを、恐ろしく目を凝らし、彼女を探した。
人並みが途絶えた後には、少しの安心と落胆をし、信号が青に変わりまた人が流れてきた時には、もしかしたら彼女に会えるのではないかという少しの期待、実際会ってしまった時どのように切り出すのかという不安と、自分のやっている後ろめたさでいっぱいになった。



人と共に、時間も流れていく。


時計は午後9時をさしていた。


ライブが終わる時間だ。


会場から流れて来たと思われる、人たちが現れだした。
手にはそのバンドのライブのパンフレットや、うちわなどを持っている。



期待と不安が僕をさらに襲い出す。
外は寒い夜なのに、僕の脇の下や額には汗が滲み出す。

「会いたい」期待と、「会ってもどうする」という不安。
「何のために待っているのか」、わからなくなっていく自分。
自分という存在が「恋」というパワーだけに支配されているのだという実感。
そしてその不安。
「何がしたいのか」自分を襲うもがき、
「何をしているのだ」という後ろめたさ。



すれ違う人並みは僕の頭の中をわからぬまま、駅の改札へと消えていく。



そのまま、時計は10時をさしていた。


 
「あれほど目を凝らしていたのだから」
あきらめににも似た、いやあきらめの気持ちがわいてきた。
これだけやったのだからと、自分を正当化することで、今の自分の気持ちを押し殺し、納得させようとしていた。

ポケベルへのメッセージはない。

握り締めた、汗に濡れたポケベルをポケットにしまう・・・。








この後、彼女に会えたのか、実は覚えていない。
覚えていないということは、会えなかったのだと、自分は理解している。
記憶というのはほんと曖昧だ。
彼女が行ったのは何のライブだったのかも、思い出せない。


その後、彼女とは付き合うことができた。
そして2年後に別れた。


彼女との思い出はあまり僕の頭に残ってはいない。
2年間付き合っていた、それがただの事実。
今はただ幸せであってほしいと願う、ただの真実。

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コメント

自分が恐ろしく馬鹿馬鹿しいことをしているということが
理屈で分かっていても
衝動に突き動かされてしまうときがありますよね。
そんな瞬間の心情を表現してくれた
りょうちんさんに共感しました。

投稿: riri | 2006年12月25日 (月) 03時59分

>「会いたい」期待と、「会ってもどうする」という不安。

すんごい、よく分かります。
私も、似たような経験があります。
今は、携帯みんなもってるから、簡単に連絡がとれてしまうけど、昔(?)は、家の電話にかけるしかなかったですもんねぇ。

大人(?)になった今、クリスマスの今日は普通の年末の月曜日ですな…

投稿: | 2006年12月25日 (月) 22時18分

↑名前入れずに送信しちゃいました

投稿: さいちゃん | 2006年12月25日 (月) 22時18分

人を好きなときのエナジーにはほんと、驚かされます。
待ち伏せした事はありませんが、いつでも偶然会えることを願っているよ。会えないけどね、そんなに簡単には。
でも、そういった時間がりょうさんをいい男にしてくれるのですね。

投稿: キクチサチ | 2006年12月25日 (月) 23時37分

>ririさん

ありがとうございます~。

若かったなぁと、自分のブログを読み返し、改めて思いました。

バカなことをしているってわかっているんですけどね。
気持ちに嘘をつくか、その衝動に任せるか・・・。
無我夢中のとき、自分は一体どこにいるんだろうって思います。

投稿: りょーちん | 2006年12月28日 (木) 13時07分

>さいちゃんさん

はい。
普通の月曜日でした(笑)。

携帯が出来てすごく便利になったけど、相手が今どうしているかなとか、想像力を働かせる機会がなくなったなと思います。

わからないでいるというのも、なかなかオツで楽しかったな。

投稿: りょーちん | 2006年12月28日 (木) 13時10分

>キクチサチさん

あ、ありがとうございます~。
いい男になっているでしょうかね。

一つのことに一生懸命になってしまう、不器用な男でして・・・。
困った物です。

投稿: りょーちん | 2006年12月28日 (木) 13時14分

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